この記事では現役化学者・とまてんがどくトカゲポケモン・エンニュートの毒ガスフェロモンについて考察します!
エンニュートについての基本情報
第七世代・ポケットモンスターサン・ムーンから登場したどくトカゲポケモン・エンニュート。毒・炎タイプポケモンで第七世代の時点では進化前のヤトウモリと含めて固有のタイプでした。エンニュートはメスしか存在せず、フェロモンでオスのヤトウモリを骨抜きにして周囲に従えている女王様的なポケモンです。
名前の由来はエン(炎)+ニュート(newt、イモリ)とされていて、両生類のイモリがモチーフになっていることが分かります。どくトカゲポケモンですが爬虫類ではありません。英語名は”Salazzle”で、火を司る精霊サラマンダー(Salamander)とステーキをジュージュー焼くという意味で使われる”sizzle”とを組み合わせた名前になっています。炎タイプのポケモンらしい名前ですね。
サラマンダーと言えば別作品にもよく登場しますが、イモリと言うよりもサンショウウオをイメージされる方が多いと思います。エンニュートは炎の両生類ということでサラマンダーにちなんだ英語名が付けられたのでしょう。ちなみにポケモンの世界でサンショウウオと言えばヌオーやドオーですね。
同じくサラマンダーが語源のポケモンとしてヒトカゲ(英名:Charmander)がいますね!
エンニュートは毒・炎複合タイプで地面タイプが四倍弱点である一方で、半減で受けられるタイプも多く耐性面では優秀ではあるものの、耐久性能が弱いポケモンです。紙耐久・高速特殊アタッカーの典型的な種族値配分ですが、通常特性の「ふしょく(腐食)」により相手の毒や鋼タイプも毒状態にすることができ、「どくどく」「みがわり」「アンコール」「かなしばり」「おにび」「でんじは」など、優秀な補助技を多数覚えるため搦め手としての性能が高いポケモンです。持ち前の素早さから相手をこちらの戦術でハメ倒す、トリッキーな戦い方が得意なポケモンですね。
エンニュートのフェロモンについて
エンニュートは体からフェロモンガスを出してオスのヤトウモリを引き寄せ、逆ハーレム型の群れを作る習性があります。図鑑の説明文を見てみると、
毒ガスには 多くの フェロモンが 含まれている。 薄めることで 官能的な 香水が できる。
ポケモン・ムーンの図鑑説明文より
とあり、フェロモンが毒ガスの成分と書かれていますね。では、この毒ガスフェロモンについて元ネタとなった生物を元に考察していきましょう。
エンニュートの元ネタとなった生物その1・ファイアサラマンダー
冒頭でエンニュートは英名から考えるとサラマンダーがモデルになっていると説明しましたが、炎の精霊・サラマンダーは架空の存在です。一方でサラマンダーと呼ばれる生物は実在します。それがヨーロッパに生息する「ファイアサラマンダー」というイモリ科の生物です。
ファイアサラマンダーは毒を持っていて、背中の毒腺から乳白色の毒液を炎のごとく発射(fire)する様子から「ファイア」と呼ばれるようになったと言われています。両生類のイモリがモチーフなのにエンニュートが炎・毒タイプになっているのも納得できますね。
ファイアサラマンダーの毒・サラマンダリン
ファイアサラマンダーがもつ毒は「サラマンダリン」というステロイドアルカロイド系の化学物質として知られています。
このサラマンダリンは神経毒として作用し、過呼吸を伴う筋肉のけいれんと高血圧をもたらす猛毒です。詳細な作用機序は未だ不明だそうですが、主に中枢神経に作用し、特に脊髄に作用することが分かっています。
エンニュートが「かなしばり」や「でんじは」を覚えるのは神経毒に由来しているのでしょうかね。
また、サラマンダリンを摂取すると幻覚作用や媚薬作用が出ると一部メディアで噂されているそうですが、科学的な根拠はないそうです。とは言うものの、こうした噂がエンニュートの設定に活かされているのかもしれませんね。
エンニュートの元ネタとなった生物その2・アカハライモリ
ファイアサラマンダーと並んでエンニュートの元ネタになったであろうイモリが日本に生息する「アカハライモリ」です。別名二ホンイモリとも呼ばれます。
アカハライモリは腹が赤いのが特徴で、そのまんまです。飼いやすいためペットとしても人気がありますが、アカハライモリも毒を持っています。それがフグ毒と同じテトロドトキシンで、腹の赤色は「俺、毒持ってるぜ!」というアピールのための警戒色となっています。
テトロドトキシンは猛毒として知られていますが、フグよりも量が少ないため死亡事故等、大きな問題になることはないようです。とは言え、アカハライモリを触った後はちゃんと手を洗いましょうね。
フグ毒の記事はこちら↓↓↓
アカハライモリの惚れ薬
エンニュートのフェロモンガスについて毒の側面で考察してきましたが、異性を惹きつけるフェロモンとしての効果についてはアカハライモリに由来していると考えられます。これは日本のとある迷信が大きく関係しています。
かつて日本では「イモリの黒焼き」と言えば惚れ薬として有名で、実際に販売されていました。オスの黒焼きを自分に振りかけ、メスの黒焼きを意中の相手に振りかければ恋愛成就するという効能(?)が信じられてきました。
まぁ科学的な根拠は全くないのですが、イモリの黒焼き→惚れ薬→フェロモンという連想でエンニュートはフェロモンガスでオスのヤトウモリを従える、という設定になったと考えられます。おまけにエンニュートは炎タイプですし黒い体色なので、「黒焼き」という言葉にぴったりですね。
上で紹介した図鑑の説明文でも「エンニュートの毒ガスを薄めると官能的な香水になる」とあるので、ポケモンの世界でもイモリがモチーフのエンニュートは惚れ薬の象徴なのかもしれません。
ポケモンの設定って、本当によく考えられていますね・・・
まとめ
今回はエンニュートの毒ガスフェロモンについて科学的な視点で考察してみました。
エンニュートのモデルになったイモリに着目すると、イモリと毒の関係やなんで炎タイプなのかの理由も考察できました。また、惚れ薬の迷信も大きく関係していて、由来としてエンニュートの生態にピッタリなことも明らかになりました。
エンニュートが毒技を使う時、追加効果で相手をメロメロ状態にできたら良いんじゃないかな~と思うのですが・・・ダメですかね?(笑)
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