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【現役化学者が考察】ハリーセンと毒のお話

ポケモン化学図鑑
とまてん
とまてん

この記事では現役化学者・とまてんがハリーセンがもっている毒について考察します!

ハリーセンについての基本情報

第二世代・ポケットモンスター金銀から登場しているふうせんポケモン・ハリーセン。水・毒タイプの水棲ポケモンでハリセンボンがモチーフになっています。全身をウロコが変化した毒針で覆っていて、10リットルの水を吸い込み、その勢いで毒針を四方八方に飛ばします。ポケモンレジェンズアルセウスではヒスイ地方のリージョンフォームも登場し、タイプも毒・悪に変化しました。原種とは違いヒスイのハリーセンはハリーマンに進化することができます。

ハリーマンに進化することで攻撃性能がアップします!

ドヒドイデと同じ耐性面で非常に優秀な水・毒複合タイプではあるものの、合計種族値が低いこともあり対戦環境ではあまり使われません。通常特性は「どくのトゲ」と「すいすい」ですが、「すいすい」は天候が雨の時にすばやさが2倍になるため雨パーティの物理アタッカーとして活躍できそうです。隠れ特性の「いかく」は場に出た時に相手の攻撃力を1段階下げられる優秀な特性のため、搦め手としてうまく使ってあげれば活躍の場があるのではないでしょうか・・・?

英語名は”Qwilfish”で、ヤマアラシなどの針を意味する”quill”と魚”fish”を組み合わせた名前となっています。ハリセンボンは英語だと”Porcupinefish”と言いますが、”Porcupine”はヤマアラシのことなのでハリーセンの英語名は直接的でなくてちょっとひねりが入っていますね。

ハリーセンの毒について

ハリーセンのモデルとなったハリセンボンはフグ目の魚類ですが、フグは猛毒・テトロドトキシンを持つことで有名です。日本では古くから食べられてきた魚ですが、調理をするためには特別な資格が必要です。無許可で調理して食べてフグ毒中毒になった事例が現在でも毎年報告されています。

フグ目の多くの種は内臓や皮膚、血液や筋肉にテトロドトキシンを含んでいますが、ハリセンボンは毒を持っていないとの説がある一方で、肝臓や卵巣には毒があるとの見識もあり、未だ明確な答えは出ていないようです。

ハリーセンもフグの仲間と考えて良さそうなので、フグと同様にテトロドトキシンを持っている毒タイプのポケモンと考えられます。

テトロドトキシンってどんな毒?

テトロドトキシン(tetrodotoxin, TTX)は神経毒であり、神経細胞や筋肉にある電位依存性ナトリウムチャネルの機能を阻害し、神経や筋肉の働きを狂わせます。強力なナトリウムチャネルブロッカーとして知られています。フグ毒を摂取した時の主な症状は麻痺となりますが、ハリーセンが水タイプなのに相手をまひ状態にする「でんじは」を覚えるのはテトロドトキシンの神経毒性に由来するのが理由と考えられます。

とまてん
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ハリーセンと言えばでんじは+ちいさくなる+たきのぼりのまひるみ害悪戦術!

人の経口摂取による致死量は1~2mgで、経口摂取では青酸カリ(シアン化カリウム、KCN)の850倍程度の毒性があります。

しかもテトロドトキシンは熱に強いため加熱調理しても分解されません。なので専門の知識と資格を持った人がフグを適切に処理しなければ食べるのは危険です。「たまに(毒に)あたる」ことから「たま=弾」→「弾に当たる」→「当たると死ぬ」という洒落に掛けて、フグの事は「てっぽう(鉄砲)」とも呼ばれますね。

この猛毒テトロドトキシンに関する研究は日本人の研究者の貢献が大きく、単離や化学構造の決定、人工合成(全合成)にも日本人が関与しています。その特徴的な構造から合成研究の挑戦的な題材とされ、多くの有機化学者を苦しめ、魅了してきました。

フグはもともと毒を持っていない!?

テトロドトキシンはフグ毒として知られていますが、フグの体内で作られる物質ではありません。実はもともと海に棲む細菌が産生したものです。この細菌が食物連鎖の中でヒトデや貝に食べられ、さらにフグに食べられることで生物濃縮され、体内に蓄積されたものと考えられています。

ポケモンの話に戻ると、ヒスイハリーセンの進化系・ハリーマンの図鑑の説明では

槍の如き 針と 凶暴なる 気質にて 海鬼の 異名を 持つ ポケモン。 毒を すすりて 己の 糧とす。

ポケモンレジェンズアルセウスの図鑑説明文より

とあるので、体外から毒を摂取していたという説明文とも合いそうです。糧として毒をすすっていたというより、食べた餌に毒が入っていた気がしますが・・・

フグ自身にも電位依存性ナトリウムチャネルは存在するのですが、チャネルの構造が私たちとは少し違います。そのためフグには耐性があり、テトロドトキシンを摂取しても中毒死することはありません。

ちなみに完全に外界と隔離した環境で飼育すると生物濃縮が起こらないために無毒フグを作ることができるそうです↓

無毒のとらふぐ

何で毒をもつようになったのか

ではなぜ猛毒のテトロドトキシンを体内に取り込むのか?という疑問が生まれます。その疑問に対する調査・研究が行われ、現在までにその回答となる事実がいくつか挙げられています。

  1. 身を守るため
  2. 精神安定剤として機能する
  3. フェロモンになる
1.身を守るため

フグの中には皮膚からテトロドトキシンを分泌する種もいて、肉食性の魚が嫌うため捕食されることを防いでいるという説があります。また、テトロドトキシンにより寄生虫が付きにくくなることが知られています。そのため、無毒フグは寄生虫が付きやすくなり、いけすから海に放流すると生存率が低くなるとされています。皮膚にもテトロドトキシンが含まれているので、寄生虫を寄せ付けないバリアの役割も果たしているんですね。

さらに、テトロドトキシンが卵巣に蓄積する種が多いことから、卵を食べられないようにする役割をもっているという説もあります。

2.精神安定剤として機能する

フグはデリケートな生き物で、テトロドトキシンが枯渇するとストレスがたまりやすくなり凶暴になります。そのため、ほかの個体を傷つけてしまうことがあり、いけすでの無毒フグの養殖はかなり大変です。

とまてん
とまてん

いつも怒った顔をしているハリーセンはテトロドトキシンが足りていないのかも・・・?

フグはテトロドトキシンを含む餌を好んで食べる習性がありますが、精神的安定を求めて食べているのでしょうか・・・?

3.フェロモンになる

テトロドトキシンがフェロモン的な作用を持つことも知られていて、産卵期のメスがオスを誘う機能もあります。

ポケモンの中にはフェロモンを使ってオスを引き付ける種族がいます。どくトカゲポケモンのエンニュートですね。エンニュートはイモリがモチーフのポケモンですが、実はイモリにもテトロドトキシンをもつ種がいます。イモリのフェロモンは別物質なのですが、長くなるので別の記事で紹介します。

テトロドトキシンの薬理学的な活用

前述したように、テトロドトキシンは電位依存性ナトリウムチャネルを阻害します。確かに毒性は強いのですが、適切な量をコントロールすれば鎮痛剤として使用できることも知られています。

ナトリウムチャネルにも複数種類(サブタイプ)があり、あるサブタイプが活性化されると痛みの電気信号が流れます。テトロドトキシンによりナトリウムチャネルを阻害すると痛みの信号が流れなくなるため、鎮痛(痛み止め)作用をもたらします。これも「毒と薬は紙一重」ということを象徴する事例と言えます。

もしかしたらポケモンの世界ではハリーセンが発射した毒針から鎮痛薬をつくっているのかもしれませんね。

まとめ

今回はハリーセンのもつ毒について科学的な視点で考察してみました。フグ毒として知られるテトロドトキシンがハリーセンの毒であると推定しました。

もしそうだとするとかなり恐ろしいポケモンですね。

だって、現実世界のフグは食べなければ毒の影響はないですが、ハリーセンの場合は猛毒テトロドトキシンを含んだ毒針を四方八方射出して攻撃してくるんですよ!

もし海で出くわしたら刺激しないよう、そっと離れましょうね。

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